■土地基盤
まずは、エターナルにおいてはかなり潤沢と言っていい、『27枚』も入っている土地について。
半分以上が特殊地形と、一見単色の強みを放棄しているように見えますが、4枚も取られた《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》が無色地形からも黒マナを供給し、しっかりマナ基盤を支えます。
特に本来マナを生み出さない《Maze of Ith》と《The Tabernacle at Pendrell Vale》がマナ土地として換算できるようになるのは大きな利点でしょう。
アーボーグは手札にダブついても、《小悪疫/Smallpox》の生贄先に使えますのでストレスに感じる場面は他のデッキに比べて少ないでしょう。
加えて、伝説ルール改訂による所謂「流し打ち」が出来るようになったのも4積みする上での追い風になっているのでしょう。
また、土地をフィニッシャーに据えることで相手の除去から逃れ易く、こちらの除去から巻き込まれ難くなっている点がポイントです。
POXでは、しばしば《冥界のスピリット/Nether Spirit》や《墓忍び/Tombstalker》などが攻撃手段に使われますが
このデッキは一貫してクリーチャーが使用されていません。(それこそサイドボードでさえも!)
KMC Invitational : 注目デッキ
黒単Pox。
レガシー黎明期からある由緒あるこのデッキですが、近年の他のデッキパワーのインフレにも負けずに生き残り続けている理由とは何でしょうか?
勿論、新カードが出ることによってPox自身が進化し続けてきたこともあります。
ですが、単色デッキかつコントロールデッキである以上、そこまで頻繁に強化を受けられるわけではありません。
では、Poxが今も生き残る理由とは。それはPoxというデッキ自体が現状のメタゲームにあるデッキに有利を付けられる何かを持っているのでしょう。
今回ベスト4に残ったPoxからそのヒントを探してみましょう。
■除去
昨今の環境に最もインパクトを与えたカードとは何でしょうか?
最も記憶に新しいのはおそらく《真の名の宿敵/True-Name Nemesis》でしょう。
この徹底して相手の干渉を退けるその『無敵』とも言える能力にもしかし、弱点はあります。
それは、『対象を取らない除去』全般の前には無力な点です。
POXにはそう言った除去が大量に含まれています。こういった点が環境に生き残る結果に繋がったのでしょう。
■ロック手段
POXにはロックデッキの側面もあります。
単体で除去までこなす《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》を始め、「不毛ハメ」用の《世界のるつぼ/Crucible of Worlds》などがあります。
《世界のるつぼ/Crucible of Worlds》は《小悪疫/Smallpox》で消耗した土地を回復するので攻防一体の縁の下の力持ちでしょう。
また、《Sinkhole》などで相手の土地を削った後に相手の動きを拘束する《Nethe Void》もロック手段となり得るでしょう。
これらを高速で設置する為に《暗黒の儀式/Dark Ritual》が採用されています。
■勝ち手段
勝ち手段は5枚積まれたミシュラランド、そして《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》と《呪われた巻物/Cursed Scroll》のみです。
今回は単色デッキの活躍が非常に目立った形になりました。
時の流れによって消えてしまったデッキは数あれど、だからこそ、今も残る古き良きデッキが活躍するのは感慨深いですね。
「小悪疫で如何に相手だけ損をさせるか」。
POXの基本にしてメインとなるテーマを徹底して追求する姿勢がこのデッキから伺えます。
たったこれだけですが、このデッキにとってはこれで十分です。
何故なら、これらが動き始めた時には既に盤面を掌握しているからです。
Text By Sekimoto(TTW)
Spells
4《暗黒の儀式/Dark Ritual》
4《思考囲い/Thoughtseize》
4《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》
4《無垢の血/Innocent Blood》
4《小悪疫/Smallpox》
4《Sink Hole》
2《Hymn to Tourach》
2《Nethe Void》
1《The Abyss》
1《女王への懇願/Beseech the Queen》
1《世界のるつぼ/Crucible of Worlds》
1《ファイレクシアのトーテム像/Phyrexian Totem》
1《呪われた巻物/Cursed Scroll》
Lands
11《沼/Swamp》
4《不毛の大地/Wasteland》
4《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》
4《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》
1《Maze of Ith》
1《リシャーダの港/Rishadan Port》
1《産卵池/Spawning Pool》
1《The Tabernacle at Pendrell Vale》
■Sideboard
3《虚空の力線/Leyline of the Void》
3《仕組まれた疫病/Engineered Plague》
2《煙突/Smokestack》
2《苦花/Bitterblossom》
2《地獄界の夢/Underworld Dreams》
2《真髄の針/Pithing Needle》
1《Chains of Mephistopheles》
Player Name : Adachi Ryosuke
Deck Name : 世界でいちばん黒くなる
Deck Designer : 松尾 尚史